第2章 氷の女教師

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 タドルが愕然として空から視線を下げた。確かに一見すると体幹だったり持久力だったりが必要なように見えるが、実際のところ自身の魔力で身体を移動させているので、高い『魔力値』と操作能力だけが要求される技なのだ。 「じゃあフレッグとレイズの方が俺らより早く上達するってことか」  フレッグが「そんなことはない」とタドルを止めるが、確かにパフェクターの方がバイスターよりも早く上達することは十分に考えられる。頭が残念な分、運動だけは誰にも負けないと自負しているタドルにしてみれば、体を使う分野にも関わらず他に引けを取ることに容易くは納得できないようだった。 「さて、今日の授業は以上だ!」  いつの間にか説明を終えたエリザ・カルネスの言葉に、一斉に沸き起こった歓声は恐らくこの授業中で最大のものだったろう。時間はまだ残っていたので彼女は誤解を招かないように、今日だけ特別だと二度ほど繰り返していた。 「あとすまないが、今から呼ぶものはこの後私の教室に来なさい!」終始手に持っていた名簿を広げた。「レイズ・リディームと――」  タドルとガゼルに間髪入れず小突かれる。そのおかげで他に呼ばれたもう一人の生徒の名前など頭に入るわけがなかった。 「以上だ。ここで解散とするから、今呼ばれたものは私についてこい」  それを合図に一目散に散っていく者がいれば、再び空を見上げる者もいた。 「いいから、ついてくるなよ!」  自由をむさぼるよりも野次馬精神を露わにしたタドルとガゼルに釘を差す。同じように呼ばれたのは、女子生徒一人だけで、しかも恥ずかしそうなのか人見知りなのか肩を縮こませているのだ。煩い二人がついてこない様、何度か振り向いて追い払うと、レイズはカルネス教師の元へ駆けて行った。
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