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「で、でも」タドルはなけなしの思考回路をフル回転させる。「神って名乗っているからには、その殲滅……なんとかっている奴と同じぐらい強いんだろ!」
その通りかもしれないし、違うかもしれない。レイズは自分ならそう答えた。だがフレッグは返答に窮し、そもそもセイバー神が何者かについて順を追って説明しようとしかけたところで教室の分岐点に着いてしまった。
授業開始まで時間もないため、フレッグと半ば言い合いになりかけているタドルをガゼルが引きずっていくという形でこの話は一旦終結した。レイズは問題児に付き合わせたことをガゼルにも後で詫びなければと思いながら、とりあえず気を取り直そうと息をつくと、フレッグと共に次の授業へと向かった。
***
聖セイバー教魔法学園の各教師には部屋が与えられる。肩書きによって相部屋だったり個室になったりするが、その中でもエリザは大講義室と個室をセットで割り当てられて久しい。 若造のクセにと僻まれたりもした。だがかつてそう蔑んだ教師に「大部屋と一緒に責任重大な仕事も引き渡していい」と返した時の敗北感に潰れた彼の顔と痛快さはいつまで経っても高揚感と共に思い出せる。
午前中はほぼ担当授業はない。その代わり午後は毎日ハードな授業になるため午前は事務処理をする貴重な時間だ。自室のデスクに腰を据えて足を組み、新聞に視線を落としたまま、デスクからコーヒーの入ったカップを取り口に運ぶ。奥深い苦みが鼻を突き抜けるが、それとは別の理由でエリザは顔をしかめた。
「お、いたか」
「女性の部屋に入るならノックくらいしろ」
講義室に繋がる開いたままの扉に寄りかかる巨体に目もくれずに言葉を返す。同じ一年生Eクラスの担任、セオドア・グラント。腐れ縁のその男ははいつものように軽快に笑い飛ばしながら部屋に入ってくる。
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