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「ははははは」
勘弁してほしいとばかりに胸の前に両手を広げるが、その時に左腕に取りついた白い腕輪マディルに目が留まる。思わずサッと手を後ろに引っ込めるが、この行動を怪しがられないはずはない。
「おい、どうした」
「いやいや、何もない何も――いった!」
左の肩に前方から何かが激しくぶつかる。レイズの体が後ろへ傾く。
「おい!」
体は床に打ち付けられる事はなく、咄嗟に出されたタドルの腕に支えられる。
何事かと混乱する思考を抑えつけながら顔を上げれば、タドルが激しい剣幕で何かを睨みつけていた。
「前見て歩いてて、これかよ」
それはレイズに向けて言ったものではない。慎重に振り返ると、そこに今しがた肩にぶつかってきたと思われる二人の男子生徒が立っていた。タドルに負けないほどの形相で睨みつけている。
だが何か違和感が。
「おいタドル、止めとけ」
襟と袖に入った金色のライン。
タドルの腕を引っ張るが、被害者であるレイズを代弁するほどの怒りはそう簡単には収まらない。
「おいおい誰かと思ったら」嫌味たらしくその生徒は口をひん曲げる。「立場もわきまえず首席で入学したプレビス野郎じゃねえか」
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