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「あ、なーるほど」
呑気にぽんと手を叩くタドル。彼の事はよく分かっているから、この程度のことに今更驚きもしない。だがどうにもやるせない。
「てめえらいい加減にしろよ!」
そういえばまだ居たのか。いや、口が滑ってもそうは言うまい。そして何かを口走ろうとしたタドルの口を慌てて手で塞いだ。
やたら存在を主張してくるが、彼らとて何かを求めているわけではないはずだ。ただメンチ切って罵詈雑言を浴びせたいだけ。
だからこそ、なんと言い静めようか慎重に考え始めた時、彼らの後ろにいた野次馬が揃って何かに視線を向けた。
「おい! 道を開けろ!」
そう聞こえてきたのはチンピラの後ろから。二人が振り向くとそれまでの態度が嘘の様に、ビクリと肩を震わせたと思えば、身を丸めながら廊下の端にどけていく。
そしてその先に現れた人物。何人かの取り巻きを引き連れて歩み進む度に金色のラインが煩く輝く。
レイズは心の中で嘆いた。チンピラ相手にしていた方がよっぽどマシだったと。
「何を騒いでいる」
貴族の中の貴族。カイン・バティストが現れた。
「げ・・・・・・」
「静かにしろ!」
小声でタドルを黙らせてまず予防線を張る。辺りを見渡せば、さっきからの騒ぎも相まって、後ろにも前にも立派な野次馬による生垣が完成していた。
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