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いつにも増して冷静さがないのは緊張しているのもあるのだろう。レイズはタドルを適当にいなして無駄に広い学園の前庭を歩き始めた。
教育が行われる機関をすべて持ち合わせている聖セイバー教魔法学園は広大な敷地を有しており、その周囲を囲む塀も荘厳さを醸し出していた。敷地は区切られているが、小、中等部が隣接しており、さらに街の中央に行けば大学もある。
街中にはおよそ高い建物はないが、だからこそこのだだっ広い庭からも街の中心に聳え立ち、威厳を放つ”ある建物”を見ることができる。
学園とは比較にならないほどのその巨大な城。
それは、全世界の人々が信仰し敬愛する、「セイバー神」がおわす神聖な場所。
この世界で、最も神聖な場所だ。
「やたら金かかってんな」
タドルが嫌味たらしく言うのも無理はない。
正門から建物の正面口までの道は優に百メートル以上は続いており、これ見よがしに白いタイルで覆われ豪邸を思わせる。そこに黄色い可憐な花を満開にさせたユグレアの木が道の両サイドに植えられ、輝かしい並木道を作り上げている。
道から奥には芝生が生い茂り美しい花々で飾られ、溶け込むように優雅なベンチが所々におかれ、その美しい前庭を象徴するかのように彼らの前方には円形の噴水が、これまた優雅に構えていた。
同じように真新しい制服に身を包んだ学生が仲間内で談笑したり、逆に一人で落ち着きなくいたりと、上級生から見れば初々しい限りだろう。
「こいつらってどこでも咲くんだな」
噴水の前までくると、ふとタドルが立ち止まり空を見上げていた。その先には金色に咲き誇るユグレアの花。
「ユグレアは世界の繁栄を謳い、季節の始まりを告げるって、昔から言われてるからな」
「そうなのか? さすが頭いいだけあるな」
「頭は関係ないだろ」思わず笑いがこぼれる。「ほら、行くぞ」
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