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「とにかく上がってください。ほら、ジェロームもちょっと部屋で休んだ方がいい」
突然蘇った記憶はジェイの頭の中を揺さぶっていた。真っ白な顔をして、掴まれるままに上がった。蓮はみんなに目配せをしてジェイを部屋に連れて行った。
「横になるか?」
ジェイは首を横に振った。蓮の手を握って離さない。
「蓮、俺の車、どうして修理工場に預けっ放しなの?」
どれだけ思い出したのだろう。事件のことは何も覚えていないのだろうか。あの時、駐車場で事情聴取も受けたのに、時間が経つにつれてその記憶も消えた。そしてただ駐車場を怖がるようになった。
「運転できるのは思い出したんだな?」
「うん。蓮と一緒に車を選んだ」
「そうだったな。あれは楽しかった!」
顔を見上げた。ぱちぱちと瞬きする。
「そうだったね! 楽しかった! どれにしようかって、でも最初に高いの見ちゃって俺には買えないって思って」
「あの時お前、金額見てゾッとした顔してた」
「中古でいいって蓮が言わなかったらきっと買えなかったよ……俺、蓮に車のお金全部返した?」
「……まだだ。あと22万、残ってる。利子はつかないから安心しろ」
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