7.隠れた記憶

13/21
前へ
/330ページ
次へ
  「とにかく上がってください。ほら、ジェロームもちょっと部屋で休んだ方がいい」  突然蘇った記憶はジェイの頭の中を揺さぶっていた。真っ白な顔をして、掴まれるままに上がった。蓮はみんなに目配せをしてジェイを部屋に連れて行った。 「横になるか?」  ジェイは首を横に振った。蓮の手を握って離さない。 「蓮、俺の車、どうして修理工場に預けっ放しなの?」  どれだけ思い出したのだろう。事件のことは何も覚えていないのだろうか。あの時、駐車場で事情聴取も受けたのに、時間が経つにつれてその記憶も消えた。そしてただ駐車場を怖がるようになった。 「運転できるのは思い出したんだな?」 「うん。蓮と一緒に車を選んだ」 「そうだったな。あれは楽しかった!」  顔を見上げた。ぱちぱちと瞬きする。 「そうだったね! 楽しかった! どれにしようかって、でも最初に高いの見ちゃって俺には買えないって思って」 「あの時お前、金額見てゾッとした顔してた」 「中古でいいって蓮が言わなかったらきっと買えなかったよ……俺、蓮に車のお金全部返した?」 「……まだだ。あと22万、残ってる。利子はつかないから安心しろ」   
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

511人が本棚に入れています
本棚に追加