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ジェイの顔が緩んだ。少しずつ明るい顔になっていく。
「そうか……ごめん、早く返さないと! まだ運転出来るかな? もし大丈夫なら会社とマンション、俺が蓮を乗せて行けるよね」
「それは有難いな。でも久々の運転じゃちょっと心配だ。運転したいのか?」
「したい! すごくしたい」
「じゃ、誰かに教えてもらえ、もう一度。復習しないと怖くて乗れないから」
さっきの修理工場に預けた理由はもう頭の中から飛んで行ったらしい。すっかり運転する方に夢中になって話している。
「じゃ、イチさんがいいな。カジさん、ちょっとおっかないよ。飛ばすんだもん」
「三途もいるぞ。ここなら先生がたくさんいる」
「そうだね。俺が蓮を乗せられたら楽でしょ?」
「そりゃ、楽だ。やれそうか?」
「やりたい!」
「じゃ、夕食の時に誰かに頼もう」
頷くジェイの顔はとても嬉しそうだ。
(この前の記憶の整理が効果を出し始めているのかもしれない。まず友中先生に相談して、必要なら清水先生にも診てもらおう)
すんなり思い出したからといって安心は出来ない。どういうタイミングで事件を思い出すか分からない。必要なことなのに、蓮はその時が来るのが怖かった。
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