7.隠れた記憶

17/21
前へ
/330ページ
次へ
   優作はジェロームにハンバーグを渡そうとする。それをジェロームはいいと言う。 「俺のハンバーグが受け取れねぇってのか!」 「よさねぇか!!」  とうとうイチが怒鳴った。 「優作! お前10日間掃除当番だ。いいな」  とたんに優作はしゅんとしてしまった。 「……テルさん、悪かったよ……ジェロームごめんな、仲立ちしてくれたのに……ありがとな」  ハンバーグ騒ぎが終わってやっと和やかな食卓となった。  騒ぎの間、女将さんや三途川を始め他のみんなは黙々と食べている。いたたまれないとか、目を背けるとか、そんなことじゃない。要するに『我関せず』というヤツだ。それは蓮も同じ。というより、すっかりこういうことに慣れている。 「ご馳走さま、テルさん。済まない、俺のは病人食で2倍手間かけてるよな」 「なに言ってんですか。気にしちゃいけない、体に障りますよ」  薄い頭を撫でながらテルが笑う。テルと蓮は同じ年だ。けれど見た目にはだいぶ違う。時々それがジェイは可笑しくなる、口には出さないけれど。 「みんな、頼みがあるんだ」 「なんだい、大将」  親父っさんがすぐ反応した。  
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

511人が本棚に入れています
本棚に追加