7.隠れた記憶

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  「ただいま! 運転出来たよ!」  玄関にみんなが飛び出してきた。三途川も後ろの方で(やった!)という顔で喜んでいる。 「良かったな! え、一度で上手く行ったのか?」  のんのの声にジェイは嬉しそうに頷いたが、慎重派のイチはそれを抑えた。 「いや、明日の朝もう一度この辺りを回ろう。明日の夜もな」 「イチ、明日の夜は私も一緒に行く。いいわね」 「三途さんも? わ、緊張しそう!」 「なに言ってんの、そんなんじゃ課長を乗せられないわよ」  途端にジェイは真剣な顔になった。 「頑張る。蓮の出勤が楽になるように」 「そうよ。頑張んなさい。イチ、ご苦労さま。明日も付き合ってね」 「はい。そのつもりです」  イチの顔を見てジェイは何となく気になった。蓮と部屋に戻ってそれをすぐ蓮に聞く。 「ね、イチさんは三途さんを好きなのかな」 「なんだ、今頃分かったのか?」 「え! 蓮は知ってたの?」 「俺が親父っさんに跡を継げと言われた時に、イチさんは複雑な顔していたよ。だから多分そうなんだろうと思ってたんだ」 「そうかぁ。じゃ、イチさんが次の組長さんになるってこと?」 「はっきりしたことじゃない。お前、余計なことを言うんじゃないぞ。こういうことは自然に任せるのが一番いい。周りは黙って見てればいいんだ」  男女のことはジェイにはよく分からない。蓮の時とまるで勝手が違うような気がする。 「分かったよ、何も言わない」 (三途さん、連のことはもういいんだって言ってたよね……)    
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