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思った通り、池沢が提示した納期の前倒しは先方に喜ばれた。
「三途! 当たりだ、お前の読み。向こうの機嫌が直った。お前が課長補佐になった方が良かったんじゃないか?」
「いやですよ、そんな面倒なもん。そう言えばやっぱり『チーフ』ってみんな呼んじゃいますね」
「しょうがないかって思ってるよ」
「今度焼肉食べに行きません? ……誰か誘って」
「いいな! お前の奢りか?」
「バカ言わないで。私なんかに奢られたら男が廃るでしょ?」
「俺は別に構わない、廃れても」
「もう! プライド持ってくださいね!」
「お前の前でプライド振りかざす気は無いよ」
後になってその時の池沢のホッとした顔が浮かんだ。
(課長いなかったんだし、助け合わなきゃね)
仕事のための提案で、それが上手く行ったので自分もホッとしたのだと、三途川はそう思っていた。
「ただいまー」
「ただいま!」
「お帰んなさい、お嬢! ジェローム!」
今日の出迎えは洋一と源だった。
「風呂、用意してます」
「後にするわ。課長と仕事の話があるの」
「じゃ、いつでも言ってください。あっため直すんで」
「悪いわね」
「お願いします」
明日朝一の事前プレゼン。風呂よりも先に蓮に今の状況を伝えなければならない。
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