8.思い合う心

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   思った通り、池沢が提示した納期の前倒しは先方に喜ばれた。 「三途! 当たりだ、お前の読み。向こうの機嫌が直った。お前が課長補佐になった方が良かったんじゃないか?」 「いやですよ、そんな面倒なもん。そう言えばやっぱり『チーフ』ってみんな呼んじゃいますね」 「しょうがないかって思ってるよ」 「今度焼肉食べに行きません? ……誰か誘って」 「いいな! お前の奢りか?」 「バカ言わないで。私なんかに奢られたら男が廃るでしょ?」 「俺は別に構わない、廃れても」 「もう! プライド持ってくださいね!」 「お前の前でプライド振りかざす気は無いよ」  後になってその時の池沢のホッとした顔が浮かんだ。 (課長いなかったんだし、助け合わなきゃね)  仕事のための提案で、それが上手く行ったので自分もホッとしたのだと、三途川はそう思っていた。 「ただいまー」 「ただいま!」 「お帰んなさい、お嬢! ジェローム!」  今日の出迎えは洋一と源だった。 「風呂、用意してます」 「後にするわ。課長と仕事の話があるの」 「じゃ、いつでも言ってください。あっため直すんで」 「悪いわね」 「お願いします」  明日朝一の事前プレゼン。風呂よりも先に蓮に今の状況を伝えなければならない。   
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