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10時近くに三途川が部屋に来た。
「ジェイ、課長のとこの鍵、持ってるんでしょ?」
「うん、持ってる」
「課長、車持ってきていいですか?」
「俺の?」
「今日はマンションまで行って課長の車をジェイに運転させます」
「え、俺一人で?」
ジェイが驚く。
「そんな危ないことしないわよ。私が助手席。課長の車に慣れた方がいいでしょ?」
「分かった。お前に任せる」
「じゃ、出かけるわよ」
「はい。行ってくるね、蓮」
「ああ。頼むな、三途」
にこっと笑うと三途川はジェイと一緒に出て行った。
(あいつの気配りも半端じゃないな。イチさんと上手く行くといいんだが)
蓮の中には『灯台下暗し』なんて、てんで浮かんできてはいなかった。
いても立ってもいられない……ジェイたちが帰ってこない。
(まさか事故とか?)
でも帰りは2台に分かれる。ジェイとイチが一緒に乗るんだと言っていた。なら何かあればどちらかから連絡が入るはずだ。
そうは思うのに、玄関と部屋を行ったり来たり。
(電話……いや、メールいれてみようか)
けれど、それが事故に繋がるのももっと怖い。
さんざんウロウロしてやっと玄関が開いた。
「ただいまー」というジェイの声を聞いた時には、出迎えてホッとした分、怒りが込み上げてきた。
「連絡くらいしろっ! どれだけ心配したと思ってるんだ!!」
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