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そのビリっとした剣幕にみんなが身を竦めた。
「あの、大将、俺が……」
「イチさん、黙っててくれ。何があったとしてもメール1本、電話1本、入れられるだろっ! 違うか、ジェイ!」
「……ごめんなさい……」
「課長、ジェイは……」
三途川が助け舟を出そうとする。
「黙れ! 俺はジェイに言ってるんだ。理由は関係無いっ!」
言われれば尤もな話だ。遅くなるなら連絡をすべきだった。三途川には、今蓮に何か言っても無駄だと分かった。会社でもこんな蓮に盾を突くバカはいない。
「申し訳ありません、課長。ただ、ジェイを責めないで下さい。それだけはお願いします」
「お嬢……」
「イチ。後で」
「……はい。大将、申し訳ありませんでした」
深々と蓮に頭を下げて2人とも引っ込んでいった。遠巻きに見ていた連中もみんな静かに退散した。
「来い!」
手を掴まれ、竦むような思いでジェイは黙って蓮の後に続く。部屋に入り襖を閉めた途端、蓮はジェイを震えるほどに強く抱き締めた。
「お前が……事故に遭ったんじゃないかと……」
「蓮……ごめんなさい、ごめんなさい……」
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