8.思い合う心

10/21
前へ
/330ページ
次へ
   そのビリっとした剣幕にみんなが身を竦めた。 「あの、大将、俺が……」 「イチさん、黙っててくれ。何があったとしてもメール1本、電話1本、入れられるだろっ! 違うか、ジェイ!」 「……ごめんなさい……」 「課長、ジェイは……」  三途川が助け舟を出そうとする。 「黙れ! 俺はジェイに言ってるんだ。理由は関係無いっ!」  言われれば尤もな話だ。遅くなるなら連絡をすべきだった。三途川には、今蓮に何か言っても無駄だと分かった。会社でもこんな蓮に盾を突くバカはいない。 「申し訳ありません、課長。ただ、ジェイを責めないで下さい。それだけはお願いします」 「お嬢……」 「イチ。後で」 「……はい。大将、申し訳ありませんでした」  深々と蓮に頭を下げて2人とも引っ込んでいった。遠巻きに見ていた連中もみんな静かに退散した。 「来い!」  手を掴まれ、竦むような思いでジェイは黙って蓮の後に続く。部屋に入り襖を閉めた途端、蓮はジェイを震えるほどに強く抱き締めた。 「お前が……事故に遭ったんじゃないかと……」 「蓮……ごめんなさい、ごめんなさい……」   
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

511人が本棚に入れています
本棚に追加