8.思い合う心

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   蓮も落ち着いてみればあまりにも大人げなかったと思う。イチのところに行き謝り、具合はどうかと聞くとひどく小さな声で恐縮していた。 「イチさん。本当に悪かった。この通りだ」 「頭、下げないでください! 俺の配慮が足りなかったんです」  それでやっと無事に仲直りとなった。 「課長。ジェイが悪くないって分かりました?」 「ああ、分かった。済まん」 「あれじゃ可哀そうです。ジェイはイチさんのことをあんまり心配したから連絡を忘れてしまったんです。そりゃ、しなかったのは悪かったと思います。私も思い至らなくて。けど……」 「三途、悪かったと思っている」  ふっと三途川は笑った。 「課長。ジェイのことになると血相変わりますね。羨ましいですよ、そんなに思われているジェイが。でもほどほどに。ね、課長」  三途川の言う通りだ。こんなことになったのはジェイが優しすぎたからだと今では蓮も思っている。  部屋に戻って、まだ元気の無いジェイをもう一度抱き締める。何も言わずそのままじっとしているうちにジェイは落ち着いてきた。 (愛されてる。だから蓮は怒ったんだ、俺のために) ジェイはぎゅうっと蓮にしがみついた。それを引き剥がして静かで長い口づけをする。 「愛してる、俺、幸せだよ」 「俺も愛してる。死ぬほど愛してるよ、ジェイ」   
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