8.思い合う心

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   やっと来たエレベーターに乗ってオフィスに着いたのは8時53分だった。 「ギリギリセーフって感じだな」 「明日からもっと早く出ようね」  入っていくとほとんどのメンバーが来ていた。 「課長! ホントに来たんですね!」 「すっかり痩せちゃいましたね」  何人かからそんな心配の声が飛んだ。 「おはよう。悪かったな、かなりサボった」 「もう少しサボっても良かったのに」 「なんだ、迷惑か? 浜田」 「いくらか」  互いにニヤッと笑って、新人はおっかなびっくりにその様子を見ていた。この頃は『課長は怖い人』という意識が新人の中に定着しつつある。 「みんな、久しぶりだな。去年の事故といい、また迷惑をかけた。しばらくは不摂生しないようにしようと反省している。飲み会は誘わないでくれ、誘惑に負けそうだ」 「課長、連休中羽目外さないでくださいね!」 「清く正しく生活するよ、澤田」  多少笑いがあって、蓮の表情が変わった。 「さて、営業のポカのつけがこっちに回っているそうだな。みんなあれこれ大変な思いをしていると思う。スケジュール調整もよくやってくれた。今日は初っ端にプレゼンを見るが、みんなに報いるためにいつもより気合を入れて見たいと思う。その後は野瀬のサポートをする。ちょっとR&Dの意地を見せよう」 『気合を入れて』その言葉に花がブルっと反応した。いよいよ始まる、『鬼』の攻撃が。   
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