511人が本棚に入れています
本棚に追加
やっと来たエレベーターに乗ってオフィスに着いたのは8時53分だった。
「ギリギリセーフって感じだな」
「明日からもっと早く出ようね」
入っていくとほとんどのメンバーが来ていた。
「課長! ホントに来たんですね!」
「すっかり痩せちゃいましたね」
何人かからそんな心配の声が飛んだ。
「おはよう。悪かったな、かなりサボった」
「もう少しサボっても良かったのに」
「なんだ、迷惑か? 浜田」
「いくらか」
互いにニヤッと笑って、新人はおっかなびっくりにその様子を見ていた。この頃は『課長は怖い人』という意識が新人の中に定着しつつある。
「みんな、久しぶりだな。去年の事故といい、また迷惑をかけた。しばらくは不摂生しないようにしようと反省している。飲み会は誘わないでくれ、誘惑に負けそうだ」
「課長、連休中羽目外さないでくださいね!」
「清く正しく生活するよ、澤田」
多少笑いがあって、蓮の表情が変わった。
「さて、営業のポカのつけがこっちに回っているそうだな。みんなあれこれ大変な思いをしていると思う。スケジュール調整もよくやってくれた。今日は初っ端にプレゼンを見るが、みんなに報いるためにいつもより気合を入れて見たいと思う。その後は野瀬のサポートをする。ちょっとR&Dの意地を見せよう」
『気合を入れて』その言葉に花がブルっと反応した。いよいよ始まる、『鬼』の攻撃が。
最初のコメントを投稿しよう!