8.思い合う心

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   新人たちには刺激たっぷりの午前中だった。仕事に対する認識がこれまで甘かったことを痛感していた。同時に、ここの担当が仕事の最前線だと言われるわけがよく分かった。この段階で顧客を掴めなかったら受注すら出来ない。つまり、会社の利益はこの担当にかかっている…… 「恐ろしい仕事をするんだな」  石尾のことばに七生がビクンとする。蓮の指摘を聞いてから、生半可な取り組みじゃ仕事から置いて行かれると思った。 「俺、頑張るよ。プレゼン、やりたい!」  翔は花ではなく、仕事そのものにどっぷりと嵌った。無茶を言われて、それをパズルのピースをピタリと嵌めるように隙間を埋め納得させる。震えるほどのあの緊張感を味わいたいと思う。 「花さん、プレゼンの日って決まったの?」 「営業の返事待ち」 「じゃ、それまでに何度か詰めようよ。課長はいいって言ったけど、タイミングが甘いような気がする。後30秒縮めない?」 「分かった、やってみよう。手元の資料を見る回数ももっと減らしてみる」 「うん、そうして。下を向くのってどうしても印象悪いから」 「お前も厳しいな」 「そのためにいるし」   
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