8.思い合う心

21/21

511人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
   自宅のソファに座った時にはどっと疲労感に包まれた。やっぱり自宅は違う。久しぶりの仕事だった。けれど胃は痛まない。 「早くまともな飯が食いたいな。肉が食いたい」 「我慢。野菜と魚。あとはおかゆ。もうしばらく待って」 「はいはい」  キッチンから振り返ったジェイの顔が笑っている。 (お前のその振り返る顔が好きだ……)  まだセックスは無理だろうか。いつからいいんだろうか。さすがにそれは病院で聞けない。言い出してもきっとジェイは拒むだろう。 (お預け食らった犬みたいだな、俺は) 笑うよりも、切実な思いだった。目がジェイを追いかける。 (そのうち襲っちゃいそうだ……何考えてるんだ? ジェイが発作起こすじゃないか!)  ジェイの後ろ姿からテレビへと、目を引き剥がした。この方がよっぽどストレスになりそうだった。 (エプロン……つけるの止めよう。蓮の目つき変だし。俺も我慢するから蓮も我慢してね)  ジェイはジェイで、真面目にそんなことを思いエプロンを外した。まるでエプロンだけが蓮を煽ってるかのように。   
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

511人が本棚に入れています
本棚に追加