511人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
ジェイは(これは自分の話なんだろうか)とぼんやりと考えていた。説明はある程度理解できたが、とても自分が言われているとは思えない。
保坂の後を西崎が引き取って話し出した。
「これから先について考えていかなければなりません。こちらの主張を通すために、何度かジェロームと打ち合わせの必要があります。次の公判は5月7日です。検察側との調整もしなければなりません。検察は、ジェロームの訴えにより加害者を追及します。私たち弁護人は、ジェロームの代理人として検察側と話を進め裁判に立ち会っていますが、こうなるとジェローム本人の証言を求められます。その対策をしたいのです」
これまで黙っていた蓮が口を開いた。
「私と宗田が呼ばれたのには何か意味がありますか?」
「河野さんに来ていただいたのは、今のジェロームの状態を一番把握していらっしゃるので、ジェロームとの意思疎通のために今後も同席していただきたいというお願いのためです。宗田さんについては今回の証人としての立場もありますが、最初の傷害罪に言及するかどうかを検討しているからです」
「最初のというと、会社の前で俺が刺されたことですね?」
あの時はジェイのたっての願いからストーカー行為や猥褻行為を絡めずにただの偶発的な傷害罪として訴えた。
最初のコメントを投稿しよう!