9.迫りくる真実

14/32

511人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
   病院は空いていた。受付の女性がジェイをにこやかに迎えてくれた。 「ビデオを見る?」 「いえ、今日はいいです」  驚いた顔だ。以前のジェイと様子がまるで違う。 「何かあったら言ってくださいね」 「ありがとうございます」  受付の女性は蓮の顔を見て、(良かったですね)という顔をした。  オルゴールが静かに流れている。 「こういうの、いいね」 「こういうの?」 「やることなくて、考えなくてよくて、優しい曲が流れている」 「そうだなぁ。俺もホッとしてくるよ」 「蓮、体大丈夫?」 「もうどこも痛まない。気持ち悪くもない。どんどん食べて後は太るだけだ」 「お腹出るまで?」 「そういう中年になるのもいいな」  ジェイが座り直した。蓮を睨む。 「蓮は中年なんかじゃないよ」 「じきにそうなるさ。中年オヤジってヤツ」 「蓮、色気ない」 「お前が言うか?」  笑っている内に名前を呼ばれた。立ち上がりながらジェイが腕を掴んで来た。 「蓮。俺、頑張る。負けたくない」  蓮はその手をしっかりと握った。   
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

511人が本棚に入れています
本棚に追加