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「ジェローム。今からその人の顔を見せたいのだけど。どうかな?」
ハッとして蓮を見た。思うのと、実際に直面するのとでは違う。しばらく蓮を見つめていたが、友中の目を正面から見た。
「はい。見たいです。ちゃんと確認したい」
「じゃ、出すわね?」
茶封筒から写真を出した。裏返しでジェイに渡す。後は強制はしない、ジェイのタイミングに任せる。
ジェイは手に持った写真を時間を置かずに表に向けた。持ったままだともう見ることが出来ないような気がした。
じっとその顔を見た。1枚は明るい笑顔だ。人の好さそうな好青年という感じだ。けれどその目を見るとゾッとするものを感じる。
もう1枚は、髪を短く切った、刺々しい顔だ。同じ人間とは思えないほど、剣呑な目をしている。
「これ……同じ人?」
「そうだよ。同じ人間だ」
でもどっちも嫌だと思う。少し……手が震える。気持ちが悪くなる……
「ジェローム。それは誰かしら?」
「……相田……チーフ」
「はっきりと分かる?」
写真を見たまま頷いた。目が離れない。
「私を見て。ジェローム、私を見るの」
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