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「全部、思い出した?」
「……分からない……」
手が震える。でも顔を上げた。
「分からないです。今は……いろんなことが溢れて……」
「声、思い出した?」
頷いた。
「他には?」
「手を……俺の肩に載った……俺に……触った」
そこに意識を向けさせたくない。友中は続けて聞いた。
「最初に言ってた初めて会った時期のこと、順番とかで考えるんじゃなくてちゃんとわかった?」
「はい」
「もう一度聞くわね。さっきの写真の人は誰?」
「相田チーフ……だった人。もうチーフじゃない。ただの『相田』って人だ」
友中はジェイの手を握った。汗で濡れている。
「頑張ったわね。それを認めただけでも凄いことよ。よく頑張った!」
知らない内に頬が濡れていた。けれど口はキッと結ばれている。
(これは今までになかった。戦う覚悟が出来たんだわ)
「しばらくの間、落ち着かないと思う。いろんな出来事が蘇って。順番は滅茶苦茶で。いい? さっきあなたが言った通り。もう起きないことよ。出てくるのは『過去』なの。今はあなたは安全なの。一緒に河野さんもいる。一人で戦わないで」
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