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ゆっくり蓮を見た。そこに力強い目がある。絶対に自分を掴んで離さない人がいる。
「うん。頑張る。負けそうになっても蓮がいる」
「そうよ。あなたには守護者がいる。何かに溺れそうになったら河野さんを呼んで。必ずあなたを助けてくれるから」
友中は河野に写真を返した。
「見守っていきましょう。今日はもう充分だと思います。刺激が強かったくらい。何かあれば電話を。私はいつでも待機していますから」
「ありがとうございます! 心強いです。甘えさせてください」
「大丈夫ですよ。そういう時のために私はいるんですから」
にっこり笑う友中の存在が有難い。
ジェイを立たせて待合室に戻った。まだぼーっとしているのが分かる。今日はこれ以上考えるのがきっと無理だろう。多分しばらくは押し寄せてくる記憶に苛まれ混乱するだろうと思う。
薬を受け取って車に戻った。何も言わずに助手席に押し込んだ。久しぶりのハンドルを掴む。自分の体を確認した。
(俺は大丈夫だ。これでお前のことに集中できる)
静かに車を発進させた。
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