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……顔がちらつく。声が途切れ途切れに自分に囁く。触れる……指が、手が、体を這いまわる。渦の中心に吸い込まれそうで必死に何かに掴まる。
(溺れそう……息が……)
『ジェ……ジェ……イ! ジェイ!』
その声に縋る、これが安全だと分かる。しがみつく、しがみつく……
(きっと……息……出来……はず……)
ふっと暗くなる……『ジェイ!』……ほんのりと明かりが見える……暗くなる……言葉に掴まれる『ジェイ!!』……
「ジェイ! 分かるか、ジェイ!!」
目を開ける。物の形が分からない……声が揺さぶる。
「ジェイ、俺を見るんだ!」
ゆっくり声の方に顔を動かす。誰かが……いる。本能的に目を閉じた。
『こわい』
「俺だ、蓮だ。分かるか? 怖くない、俺だ」
ヒンヤリした何かを口につけられて、開くと少しずつ水が流れ込んできた。
――コクン コクン コクン
はぁーーっ
これは自分の息? 溺れそうだった、息が出来なかった。思い切り息を吸い込む。吐く。
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