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目を閉じそうになると怖かった。すぐに体を揺する。目を開けろと。すると口元に笑みがわずかに浮かんで「れん」と声を出した。
「眠りたいか?」
「うん、寝たい。蓮がいるから迷子になっても平気なんだ」
「なるなよ、迷子に。俺に掴まってればいいんだ」
「そうだね。迷子になりたくない」
「いつだってそばにいるから。お前は俺に掴まっていろ」
「うん……」
今度こそ眠らせてやった。寝息が聞こえる、静かで穏やかな。今頃になって自分の体が震えているのが分かった。
(息が止まるかと…)
それ以上は考えられない。ただ負担にならないようにそっと抱きしめていた。
その内外が明るくなり始めた。
明るくなってきたのを感じて安心してしまったのだろう。そのまま眠ってしまったらしい。目を開け、横に顔を向けると起きている愛しい者が自分を見つめていた。
「おはよう」
「おはよう」
夜起きたことが一瞬駆け巡った。『うしなう』その言葉にブルっと体が震えた。
「蓮の寝顔見てた」
「面白かったか?」
「きれいだった」
「目、悪くなったか?」
「俺の蓮はきれいなんだ」
体を起こして口づけた、静かに。唇を離して囁いた。
「俺のジェイもきれいだよ」
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