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こんな話をしていると本当に現実に戻ってきたのだと実感する。もしかしたら蓮はそれを見越しているのかもしれない。
「さ、朝飯の用意でもするか」
「蓮はゆっくりしてて。俺が作ってくるから」
「お前こそゆっくりしてろ。きっとまだくらくらしているはずだ」
その通りだ、頭が痛い気がする。夢の中で翻弄され過ぎた。やっと落ち着いてきたけれどさっきまで息切れもしていた。
蓮の真面目な声が聞こえた。
「お前が……戻ってこれないんじゃないかって心配したんだ。だからじっとしてろ。たいしたもんは作らないから」
あまりに心配そうな声だからそのまま頷いた。
夢は恐ろしかった。あの息の出来ない、肺まで水でいっぱいになったような……苦しくて。
(苦しくて? くるしい くるしい……)
何かを思い出しそうで。何かが心に引っかかる。けれど思い出したくない……
(くるしい くるしい……うぃすきい くるしかった)
ぞっとした、冷や汗が吹き出す。すぐそこに蓮がいる。なのに周りにウィスキーの匂いが立ち昇る。ウィスキーが入ってくる……
(のんだ? ウィスキー、じぶんから……のんだ?)
何回も聞かれた言葉。
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