9.迫りくる真実

31/32

511人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
   落ち着いてきたのを確認してテレビをつけた。日常に引き留めておきたい。もう夢の中に連れて行かれたくない。 (今日はもうたくさんだ)  疲れ果てた顔でテレビを見る横顔に、しばらくは事件のことも記憶のことも考えさせたくないと思う。  30分くらいして膝の上のジェイが見上げてきた。 「お腹、空いた。蓮も薬飲まないと」  はっきりとした喋り方だ。にこりと笑って返す。 「俺もだ。腹減った。すぐに出来るのはお茶漬けだ。構わないか?」 「蓮はワサビ味、だめだよ」 「分かった。普通のを食べるよ」  キッチンに立って湯を沸かす。途中、振り返り、振り返り、テレビを見ているのを確かめた。どんぶりの横に氷を浮かべたお茶を置く。嬉しそうな顔で起き上がった。 「座っていられそうか?」 「大丈夫みたい。美味しそう」 「なら良かった」  ジェイと一緒に食べた、なんの変哲も無いお茶漬けを。   
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

511人が本棚に入れています
本棚に追加