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落ち着いてきたのを確認してテレビをつけた。日常に引き留めておきたい。もう夢の中に連れて行かれたくない。
(今日はもうたくさんだ)
疲れ果てた顔でテレビを見る横顔に、しばらくは事件のことも記憶のことも考えさせたくないと思う。
30分くらいして膝の上のジェイが見上げてきた。
「お腹、空いた。蓮も薬飲まないと」
はっきりとした喋り方だ。にこりと笑って返す。
「俺もだ。腹減った。すぐに出来るのはお茶漬けだ。構わないか?」
「蓮はワサビ味、だめだよ」
「分かった。普通のを食べるよ」
キッチンに立って湯を沸かす。途中、振り返り、振り返り、テレビを見ているのを確かめた。どんぶりの横に氷を浮かべたお茶を置く。嬉しそうな顔で起き上がった。
「座っていられそうか?」
「大丈夫みたい。美味しそう」
「なら良かった」
ジェイと一緒に食べた、なんの変哲も無いお茶漬けを。
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