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食器を片付けて座った。
「なんだ?」
「写真、出してほしい」
「写真?」
「うん、あの写真」
口を開いたけれど言葉は出さずに立ち上がった。茶封筒に入れた写真をテーブルに置いた。
ジェイが手を伸ばすのを、思わず封筒を押さえた。
「どうする気だ?」
「見るんだ」
「だめだ」
「蓮」
「だめだ」
素直に手が引っ込んだ。
「俺、何がどういう風に怖いのか分からないんだ。きっと怖いのが重なったせいなんだよね。頭の中がまとまらない。でも、そのままじゃいけないんでしょ? ううん、いけないんだよ。逃げたいし、出来れば忘れていたい。でも、いけないんだ、それじゃ。そう思うんだ。だから見たい」
気負っているようでも無い。思いつめてもいない。ただジェイは自然だった。
蓮は手を離した。ジェイの手が封筒を掴んだ。躊躇うことなく写真を出す。けれど裏返しのまま2枚を並べた。
「俺、いろんなことを思い出したけど順番が分からないんだよ。それに多分全部を思い出したんじゃない」
自分の心が静かなのに驚く。まるでジェイに宥められているように。
「俺、思い出したい。もう不意打ちみたいに思い出すのはいやなんだ。だから蓮も手伝って」
考えて、頷いた。ジェイがそう望むなら。
「お前がやりたいようにやっていい。お前が決めることだから」
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