10.憎んでいい?

6/11

511人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
   食器を片付けて座った。 「なんだ?」 「写真、出してほしい」 「写真?」 「うん、あの写真」  口を開いたけれど言葉は出さずに立ち上がった。茶封筒に入れた写真をテーブルに置いた。  ジェイが手を伸ばすのを、思わず封筒を押さえた。 「どうする気だ?」 「見るんだ」 「だめだ」 「蓮」 「だめだ」  素直に手が引っ込んだ。 「俺、何がどういう風に怖いのか分からないんだ。きっと怖いのが重なったせいなんだよね。頭の中がまとまらない。でも、そのままじゃいけないんでしょ? ううん、いけないんだよ。逃げたいし、出来れば忘れていたい。でも、いけないんだ、それじゃ。そう思うんだ。だから見たい」  気負っているようでも無い。思いつめてもいない。ただジェイは自然だった。  蓮は手を離した。ジェイの手が封筒を掴んだ。躊躇うことなく写真を出す。けれど裏返しのまま2枚を並べた。 「俺、いろんなことを思い出したけど順番が分からないんだよ。それに多分全部を思い出したんじゃない」  自分の心が静かなのに驚く。まるでジェイに宥められているように。 「俺、思い出したい。もう不意打ちみたいに思い出すのはいやなんだ。だから蓮も手伝って」    考えて、頷いた。ジェイがそう望むなら。 「お前がやりたいようにやっていい。お前が決めることだから」  
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

511人が本棚に入れています
本棚に追加