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写真が表に引っ繰り返った。じっと写真を見ている姿に、時間が止まったような気がする。ジェイが動き出すのを待った。
「この人のどこが怖いんだろう。こっちの写真には嫌だって思うけどそれ以上何も感じないよ。でも」
当時の写真を食い入るように見る。
「これは怖い。すごく怖くて震えそうなんだ。けど……」
次の言葉を待った。
「この顔が俺の記憶を持ってる。そう思う」
もう昨日のようなことは起きないような気がした。訳もなくジェイが苦しむ時間が唐突に終わったような。
ジェイが自分を見つめている。
「何をしてほしい? どう手伝えばいい?」
「全部……全部、話して。蓮の知ってること、全部」
全部。
「受け止められると思うか?」
首が横に振れる。
「ううん、思えない、受け止められるなんて。でも知らないと。俺、頑張んないと」
「今日いっぺんに頑張らなくたっていいんだぞ」
「今日じゃないとだめなんだ。今日なら……きっと聞くことなら出来る気がする」
いったん目を閉じた。すぐに開けた。ジェイは真正面から向き合おうとしている。自分が逃げてはいけない。
「窓を開けてもいいか?」
「うん」
自然の音が欲しい。風が欲しい。それならきっと自分も冷静に話せる。
「全部、話す。思い出したこともあるだろうが、順番に話すよ。いいな?」
「それでいいよ」
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