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話が終わって静かな時間が過ぎていった。
立ち上がった蓮は二人分の水を持ってきた。ジェイの前にコップを置いて、自分は飲み干した。
ジェイの手が上がって、コップを掴んだ。けれどその手は持ち上がらない。
「ジェイ? 大丈夫か?」
「……蓮、ソファに座りたい……蓮の隣に」
抱えてやらないと立てなかった。震えている、蓮の手に縋って歩く。ソファに座らせてその隣で頭を引き寄せた。
「それ……俺に起きたことなんだね、全部」
「そうだ。知らなかったこと、たくさんあったか?」
「……たくさん……あった……」
「聞いてよかったのか?」
間が空く。
「知らなきゃいけなかったと……そう思ってる、今は。ごめんね、明日のこと、分からない。でも、今はそう思うんだ」
「そうか」
「お願い。もう一度写真、見たい」
蓮はテーブルから写真を取ってジェイに渡した。顔は穏やかなのに、写真が歪むほどの力で掴んでいた。
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