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一緒に家にいよう。そう言っていたけれど、蓮はジェイを散歩に誘った。特に逆らう風でもなく、ぶらりと歩く蓮の後をついていく。
風が気持ちいい。天気がいい。もう4月も終わり、目の前にはゴールデンウィークが待っている。
外は充分ざわついているし、無理して話す必要なんか無い。これが夜なら手を繋いで歩いてもいいくらいだ。
なんとなく歩いていると知らない小道が出てきて、そこをどんどん進んでいった。
「どこに続いてるの?」
「さぁ」
「分かんなくて歩いてるの?」
「こんな道があるなんて知らなかったんだよ、こっちの住宅街にはほとんど用が無いからな」
普段忙しくしているし、散歩をするのはいつも駅の方。帰りにビデオ屋に寄ってマンションへ。だからなんとなく今日は裏手に来てみた。家と家の間にあるその道は、私道というわけでも無さそうだ。
小さな十字路があって右の方にあまり目立たない喫茶店があった。
店の前に立つと、年代物と言っていいような風情。でもきちんとした店だ。
「入ってみるか?」
「でも、蓮はコーヒー飲んじゃダメだよ」
朝もジェイのためにだけコーヒーを淹れた。まだカフェインを取る許可は出ていない。
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