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表のショー ケースを覗く。
「懐かしいな! ミルクセーキだ。俺はこれを飲むよ」
「ミルクセーキ?」
「これなら腹にも優しい」
入ってみると古いジャズが流れている。テーブルも椅子も古いが磨かれていて、今風じゃないのが落ち着く。客もどちらかというと年配が多い。穏やかな話し声で駅前とは大違いだ。
「いらっしゃいませ。お決まりですか?」
「ミルクセーキを1つ」
「いえ、2つで」
「ミルクセーキ、2つですね」
ウェイトレスは蓮よりちょっと年上だろうか。髪を後ろに束ねてきびきびと動いている。
「マスター、ミルクセーキ2つ」
「ミルクセーキってどんな味なんだろう」
「お前は嵌ると思うよ」
「ここ、いいね。また来たい」
「ちょくちょく来ようか。近いんだし」
久しぶりのミルクセーキは甘すぎた。けれどジェイは喜んだ。蓮の言った通り、ミルクセーキに心を鷲掴みされたらしい。
思い立った散歩のお蔭でいい店を見つけた。
「週末はここに来ようよ」
「ミルクセーキ飲みに?」
「だってこんなの飲んだこと無い」
堪能して店を出てまたぶらぶら歩いた。坂があれば登ってみたり。神社があって入ってみたり。
もうたいした発見は無かったが足の向くまま二人で歩いた。
前方にある道路に出ると、なんてことはない、駅の真裏に続いていた。
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