11.間違い

15/18

512人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
  「イヤなことはイヤだと言う。それは変わっていない。俺は今のお前がイヤだ」  大きく体がビクリとして、目を見開いて蓮を見つめた。頭の中に『お前がイヤだ』という言葉が反響する。 「ジェイ、はっきりしよう。お前、俺に気を遣って一緒にいるつもりか? なら一緒にはいられない」  言葉が出ない。 「遠慮される覚えは無い。それは付き合ってるとは言えない。そもそもお前を守りたいという気持ちと、面倒見てやるという気持ちは同じじゃないんだ。大切だから守りたい。それだけだ。お前もそういう意味で俺が倒れた時に支えてくれたんじゃないのか? 日頃世話になるからとか言うのか?」 「そんなこと、思わない! 俺は蓮が大事だから」 「だから俺は安心してお前に甘えようと思ったんだ。そして甘えて我がままをたくさん言った」  蓮が何を言おうとしているか……自覚がある。これ以上迷惑をかけたくない、誰にも。罪悪感と自己嫌悪。……せめて役に立つ人間になりたい。 「花が前に言っていた。自分がそういう目に遭った時、自分が悪いんだと思った時があったってな。何もかも自分が悪いから引き起こしたんだと。お前、言っただろう? 『俺は絶対に悪くない』って。あれが本当のお前の気持ちだと俺は思ったよ。そしてそれは正しい」 ぽたんと涙が落ちる。   
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

512人が本棚に入れています
本棚に追加