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確かにそれは魅力的な話だと思う、一人なら。でも蓮がいる。だから心配が無いのだと花には言うことが出来ない。
「考えてみる」
「なんなら三途さんに頼んでやるよ」
「自分で話すから。だから花さんは真理恵さんのことだけ考えてよ。楽しみにしてたんだから」
「参るなぁ。あいつさ、新婚旅行っていうより無料の通訳がいるからカナダ行きたいんだよ、きっと」
「可哀そうだよ! 花さんと一緒だから楽しいに決まってるよ」
(ああ、変わってない)
花はやっと安心した。昨日のことはもう気にするのは止めた。
「お前、アイツのことで何かあったら絶対相談しろよ。絶対だぞ、いいな?」
「うん……ありがとう。誰にも言えなくても花さんには相談するから」
「よし! ならいい」
蓮の言う通りだ。遠慮したり申し訳ないと思うのは花の望みじゃない。助けが欲しい時には俺に言えと言ってくれている。有難いなら素直になるべきなのだ。
「俺、花さんと出会えて良かった……」
「何だよ、いきなり」
「親友でお兄さん。そうでしょ?」
「……ああ」
「あれ? なんで花さん赤いの?」
「ば、ばか、赤くなんかなってない!」
「赤いよ、ほら、ここ」
頬に指が触れる前に花は逃げ出した。
「先にオフィスに行ってる、ゆっくり来い!」
自分と同じだ、花も照れ屋なのだ。そう思うとどこか嬉しい。
休み中。じっくり事件のことを考えたかった。だからそれまではいい。今は何も考えたくない。
空き缶を捨てて階段を上がって行った。
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