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エレベーターが開いて出てきたのは池沢と三途川だった。
「チーフ、奢ってくれるんですね! 珍しい」
「お前、ホントに奢られるの好きだよな」
「人の好意は素直に受ける主義で」
「はいはい、女王さま。何がいいですか?」
「ストレートティーを」
「はいはい」
冷たいストレートティーを渡すと男らしく一気飲みする。
「そこで空き缶潰したら完璧だよな、お前」
「どう完璧なんですか?」
何か考えている風で池沢が上の空だと思った。
「どうしたの? 何かあった?」
「親父をね、施設に入れた方がいいんじゃないかって」
「お姉さん?」
「どうやら付き合ってる人がいるらしいんだ。今まで苦労してきたから反対なんかするつもりないし。けど姉さんの方が親父のことで気にして」
「じゃ、結婚は本決まりなのね?」
「そうなると思う。最近親父も時々訳分かんないこと言うしな。その方が3人それぞれのためになるだろうって」
確かにそうだろう。父親のために自分たちの幸せを犠牲にする。そんな感覚でいるよりはずっといいはずだ。
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