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「池沢さんは? どう思ってるの?」
「なんか……罪悪感っていうかさ……親父をそこに預けて俺は休日どうすんのかなとか。ま、親父んとこに面会に行きゃいいだけなんだけど。急に自由になるって変なもんだな、余計なこと考える」
「池沢さん、苦労性よね。でも、はっきり言えば中途半端だわ」
「中途半端?」
「そ! どっちつかずでお父さんにもいい顔したい、お姉さんも大事にしたい、だから自分の休日を捧げようなんて。それじゃお姉さん、池沢さんに悪いって思いながら結婚するわけ?」
池沢の返事がない。
「あら、確信突いたかしら」
溜め息が漏れ、池沢の口元が緩んだ。
「なるほどね、確かに中途半端だ。そうか……姉さんの気持ちを考えてなかったよ。だから施設って言いだしたんだな、俺一人に押しつけたくなくて」
「それに池沢さんが会社から帰るまでどうする気なの? ヘルパーさんにだって限界があるでしょ?」
「そうだな」
「悪い方ばかり考えてたら前には進めないわよ。しっかりなさいな、チーフとしての指導力は抜群なのに」
「おい、俺は課長補佐」
苦笑が出る。三途川も笑い出した。
「しょうがないです。私たちも困ってるんだから」
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