12.ゴールデンウィーク

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   29日はたくさんのビデオを借りた。 「蓮の好きなのも見たい」  そう言ってサスペンスも借りることになった。 「これ、あまり笑うとこないぞ」 「いい。いろんなのを知りたいし。特に蓮のこと」  ビデオ屋じゃなければ顎を押し上げていただろう。そんなにキラキラした目で言われたら。  蓮は自分からあの問題に触れるつもりは無かった。ただ待つことにした。何かあればきっとジェイは相談してくれる。それを信じて。  意外にもジェイはサスペンスに嵌った。真剣な目でカリントウを左手で握りしめて食い入るように見ている。 (手のひら、ベタベタだな) 主人公や女性が危険な場面になると思わず目を瞑る。 (おい、そこで目を瞑っちゃ、この後分かんなくなるだろ)  なんだか映像よりジェイを見ている方が多いような気がする。  さすがにクライマックスでは見入っていたが、ジェイのリアクションで肝心なところを見逃した。 「わぁっ!! 後ろっ! 後ろ見て! 撃たれるよ、後ろだってば!」  立ち上がって叫ぶジェイ。 (こいつと映画館はやめよう)  そう思っているうちに山場は過ぎてしまった。かと言って繰り返すのも興覚めだ。蓮はクライマックスを諦めた。 「蓮……サスペンスって凄い……」 「いいから手を洗って来い」 「あ」  もう一本を続けてみるのは止めたい。次の作品はずっと見たいと思っていたものだ。 (ジェイが寝てから見てもいいし) 手を洗ってきたジェイは躊躇わずにそのDVDを押し込んだ。  
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