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翌日の仕事は当然たいしてやることもなく、ジェイは資料の整理に専念した。終わると棚にあるキングファイルを整理し、野瀬チームの過去資料を案件別に分けていく。
「終わったらそれで一つにしておけばいいのに」
最近は特に放ったらかしが多い。
「悪いな、どうせお前がやってくれるだろうって思っちゃってさ」
「澤田さん! みんなそう思ってるの!?」
「ま、まぁな。ほら、俺たち追われてるから」
確かにそうだ、野瀬チームは常に忙しい。休憩や昼食の間でさえ頭の中はフル稼働だ。そして何かが頭に浮かぶとそこで書き物が始まる。
「ごめんなさい、これくらいなら俺やるから」
「悪い! 気をつけるよ、お前に押しつけるつもりじゃなかったんだ」
やり取りを見ていた石尾がそばに来た。
「俺も手伝います。分け方教えてください」
「石尾くん?」
「他にも何かあったら教えてください、先輩なんだから」
言い方はつっけんどんだけれどジェイは嬉しくなった。自分からそれを言い出した後輩が突然可愛くなる。
「じゃね、ここに日付あるでしょ? 後、ここに印刷が途切れたりするけど案件名が出てる。それが無かったら前後の繋がりを見るんだよ。分かんなかったら聞いて」
「これって誰かに教わったんですか?」
「いや、ジェイには誰も教えてないよ。こいつがいつの間にか整理してくれてたんだ。次にファイル開けた時に驚いたよ」
「そうなんですか……」
(これじゃ追いつくなんてずっと先だ……仕事を探すってこういうことか)
悔しいけれどまた一つ嫌いな先輩から学んでしまった。
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