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「きゃぁ!」
「加奈ちゃん!」
急な斜面の岩場を滑り落ちていく加奈の手を反射的に三途川が掴んだ。人一人の重みで滑っていく三途川の片手は岩の窪みを掴んでいた。空に浮かんだ足をバタバタと動かして加奈は必死に三途川の手に掴まっている。
(こんなことはよくあることだ、たいしたことじゃない)
三途川は深呼吸を繰り返した。
「加奈ちゃん! 暴れないで、じっとして!」
上からすぐに栗本も柳沢も助けにきた。他のメンバーは上からバックアップしてくれている。
「加奈! 動くんじゃない!」
「パパーーっ! 助けてーっ!!」
「動かないでっ!」
それでもパニックを起こしている加奈の足は暴れに暴れた。ロープが加奈の所に落ちてきたた。
「加奈ちゃん! それに掴まって!」
「いやだ、怖いっ!」
「動くんじゃないっ! さっさと掴まんなさい!!」
怖がって暴れる加奈の体重に、窪みを掴んでいる三途川の手に余計な負担がかかる。斜面から強くなり始めた雨が三途川の手を伝って流れていった。
「加奈っ、ロープだ! パパが助けてやる、ロープを掴め!」
風も出始め、ロープが揺れる。なかなかそばに来ない。しかも加奈は片手を三途川の手から離すのが怖い。
(しょうがない)
「加奈ちゃん、私を見なさい!」
やっと加奈が三途川を見上げた。
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