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「いい? ゆっくり呼吸して足を動かさない。ロープをしっかり見て。今からあんたをロープに近づけてあげる。必ず上手く行くからそれを掴むの。私はあんたを離さないと約束する。上でパパが引き上げてくれるからね、信じなさい」
真っ青な加奈が頷いて足の動きがやっと止まった。三途川が少しずつ体を揺らして加奈を振る。それは大きくなり始め、何度かロープは加奈に近づいた。けれど張り付いたように加奈の手が離れない。
「ほら、行って!!」
揺れているせいで三途川の岩を掴む手が滑りそうだ。
「加奈! 今だ!!」
ようやく加奈はロープを掴んだが、三途川の手も離さない。
「私の手を離すの! 早くっ!!!!」
(これじゃ共倒れだわ!)
もう手がもたない。下手をすると自分が加奈にぶら下がってしまう。
三途川の決断は早かった。加奈の手を思い切り振り解いた。その反動で手が滑り始めた。必死に両手で掴まれる窪みを探す。けれど雨がそれを許さない。
「三途ーーーっ!!!!!!」
三途川の体は消え、加奈は上に引き上げられた。
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