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「姉さん、連休なのに悪い! いつ帰るか分からないけど親父頼む!」
バッグにとにかく着替えを突っ込んで、現金を確かめて飛び出した。
(三途、三途、三途………)
「三途、三途……」
それはいつの間にか呟きになっていた。そんなことにも気がつかない。あっという間に蓮のマンションに着き、下で待っていた蓮とジェイを拾った。
「場所は!?」
「船窪岳だそうだ、さっきネットで調べたが結構危険なところらしい。長野と富山の県境にある。イチさんが親父さんたちを乗せて行ってる。滞在場所が確定次第、連絡をくれると言っていた」
「なんでまた……」
「向こうはかなり天候が悪いらしい……6、7人で行ったようだが三途だけが行方不明だ」
「どうしよう、三途さんに何かあったら……」
後部座席からジェイの震える声がする。
「何かあってたまるか! 三途は無事に帰ると言った!」
「池沢?」
「俺は! 俺は……」
「お前、まさか…」
「高速入ったら飛ばしますよ!」
それ以上蓮は何も言わなかった。池沢の顔を見れば分かる、三途を大切に思っていることが。
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