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2時間ほど経って電話が入った。
「河野です!」
すぐスピーカーにした。
『イチです、安曇野インターチェンジを降りて国道147号を北に向かってます。葛温泉の方に行って七倉山荘ってとこです。今日はそこまで行きます。大将たちの場所は確保しときますから』
「天気は?」
『悪いそうです。雨と風で……ヤバイです、大将………』
イチの声も震えている。
「イチさん! 池沢です!」
『あんたも来てくれたんですか!』
「時間、どれくらい経ってるんですか、三途が消えてから」
『今日の昼前に……崖を落ちたそうで……』
「昼前……」
もう6時を過ぎている。居場所が分からなくて風雨の中……
「とにかく急ぎます! 何か分かったら連絡ください! お願いします!!」
「安曇野まではもう近いです。七倉って分かりますか!」
「今見てる。……安曇野から七倉は約2時間だ」
「じゃ、9時前には着きますね」
「お前、山の支度して来たのか? 寒いぞ、この時期」
「ガッチリして来ました。課長は大丈夫ですか? ジェイは?」
「二人とも大丈夫だ。三途にしょっちゅう聞いてたからな」
その後の車内はシンとしてしまった。池沢から発される威圧感には蓮でさえ気圧される。
(そうだったのか……三途、無事でいろよ。今の池沢をお前に見せてやりたい)
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