12.ゴールデンウィーク

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   2時間ほど経って電話が入った。 「河野です!」 すぐスピーカーにした。 『イチです、安曇野インターチェンジを降りて国道147号を北に向かってます。葛温泉の方に行って七倉山荘ってとこです。今日はそこまで行きます。大将たちの場所は確保しときますから』 「天気は?」 『悪いそうです。雨と風で……ヤバイです、大将………』  イチの声も震えている。 「イチさん! 池沢です!」 『あんたも来てくれたんですか!』 「時間、どれくらい経ってるんですか、三途が消えてから」 『今日の昼前に……崖を落ちたそうで……』 「昼前……」  もう6時を過ぎている。居場所が分からなくて風雨の中…… 「とにかく急ぎます! 何か分かったら連絡ください! お願いします!!」 「安曇野まではもう近いです。七倉って分かりますか!」 「今見てる。……安曇野から七倉は約2時間だ」 「じゃ、9時前には着きますね」 「お前、山の支度して来たのか? 寒いぞ、この時期」 「ガッチリして来ました。課長は大丈夫ですか? ジェイは?」 「二人とも大丈夫だ。三途にしょっちゅう聞いてたからな」  その後の車内はシンとしてしまった。池沢から発される威圧感には蓮でさえ気圧される。 (そうだったのか……三途、無事でいろよ。今の池沢をお前に見せてやりたい)   
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