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言っていた通り、9時前には七倉山荘に着いた。いくらかの小雨が降っている。思ったより冷えてダウンを着ていてもかなり寒い。駐車場はほぼ満杯で、やっと空きスペースを見つける有様だ。
「凄いな」
20人余りが大声で話しながら行き来する中を山荘へと向かった。これだけの人が三途のために動き回っている…けれど、蓮もジェイもまるで実感が湧かない。
山荘の中で案内された部屋には親父っさん、女将さん、イチ、カジがいた。
「大将!」
イチがすっ飛んできた。
「ご心配をおかけします!」
「いや、そんなことより状況は?」
「夜だってことと雨風が強いってことで……実際の捜索は明日になるそうで……」
「明日……」
親父っさんがこっちを見て頭を下げた。女将さんは突っ伏したように泣いている。
「なんでこんなことに……」
池沢の言葉にイチが怒りの表情で堰を切ったように話し始めた。
「仲間内で一人が初心者の娘を連れてきたそうで。お嬢は猛反対したらしいですが他が同行を許したそうです。その娘が岩場を滑り落ちるのをお嬢が掴んで宙吊りになって……娘を助けてお嬢が落ちたんです」
「そいつは!?」
池沢の表情が険しい。
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