12.ゴールデンウィーク

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  「てめぇらがお嬢をこんな目に遭わせたのか!!」 「イチ、止めろ!」  跪いて震える戸田に親父っさんが声をかけた。 「しょうがないです。あんたらも悪い。けどありさも悪かった。そこまで反対したならその娘さんをどんなことをしても返すべきだった。そこはありさの甘さですよ。まだ一人前とは言えねぇんだ、生きるってことが分かっちゃいねぇ。こんな大騒ぎを起こしたのは、その甘さってヤツなんだ」  女将さんがとうとう声を漏らして泣き始めた。 「みっともねぇ! 泣くな! 一たび外に出たら覚悟が必要なんだ。ありさは分かっているはずだ」  ビン!とした声にみんなが息を呑む。そのまま説明をしていた男性に手をついた。 「そうは言っても親ですからね。足りない分は言ってください。きっちり用意いたします。たとえ……たとえ遺体になっていたとしても……探していただければ有難い……」 「……分かりました。そうなる前に見つけるよう努力します。今、船窪小屋というところまでは救助隊が行っています。そこで今夜は過ごして、よほどの天候じゃなければ明け方には出発します。そこから遭難場所まで約3時間近く。向こうでお仲間がビバークして待機しているということなので、場所の特定は大丈夫でしょう。ただ……」 「ただ?」  
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