513人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
「ついでと言っちゃなんだが。ジェロームのことを聞かせちゃくれないか?」
今の三途川のことからも気持ちを逸らしたいのだろう。親父っさんはジェイのことを聞きたがった。蓮は語り始めた、これまでのジェイの物語を。
「ウチの若いもんも碌な目に遭っちゃいねぇが……狂ったようにあんたを探した姿、忘れらんねぇよ。そんな話聞かされてよく受け止めたな」
「受け止めてないと思いますよ。今は考えないようにしているんだと思います」
「思うって……聞いてやんないのかい?」
「ジェイが言い出すのを待ちます」
溜め息が出た。
「……やっぱりあんたも強いねぇ。信じるってそういうことなんだろう、池沢さんもな。俺には……心配しかねぇよ」
「親ですから。人を思う姿はそれぞれ違いますよ。ジェイにも母親が生きていればきっと何もかも違っていただろうに。でも誰もいない、俺以外には。そう思ってましたが、いつの間にかジェイには家族みたいな仲間が出来ていた。本当は強いんだと思います、ジェイも」
「あの子はいい子だ。大事にしてやりたいとみんなそう思うんだろうよ」
「親父さん。三途も強いです。親父さんの子ですからね」
「……ああ、そうだね。俺の娘だ」
親父さんは優しい目をした。
最初のコメントを投稿しよう!