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部屋に戻るとやはり居ても立ってもいられないという顔ばかりだった。ジェイがそばに来た。髪が濡れている。
「どうしたんだ、冷えてるじゃないか!」
「さっき表に出てた。本当に寒かった……三途さん、これより寒い思いしてるんだよね……」
「だからってお前が風邪引いてもしょうがないだろう」
バッグからタオルを出してジェイの頭を拭き、ダウンを脱がせた。自分の上着を羽織らせる。
「知りたかったんだ、どうしてそれでもこんな所に来たいのか。こうやって危ない目にも遭うのに」
「それで分かったのか?」
ジェイの冷たい手を温めながら穏やかな顔で聞いた。
「ううん、分からなかった、俺なら来ないから。けど三途さんには大事なことなんだって。そう思ったよ」
「大事なこと?」
「三途さんは強い、みんなそれは知ってる。でもどうやって強くなったのかな。さっき外で感じたんだ。戦ってるんだって、自分と。強いんじゃなくて、強くなろうって。きっとそうなんだ」
言われれば納得がいく。
課長になった頃、自分より年上の三途川にどう接していいか分からなかった。最初はよくぶつかったが、自分が行き詰った時に喝を入れられた。
『上に立つもんはシャキッとしなさい! 上司なんて突っ張ってなんぼのもんでしょう!』
昇進も蹴って自分の下で働いてくれた。いつもみんなをよく見て、自分にも知らせない内に処理してくれたことがどれだけあったのか。三途川も時には間違いを起こす。けれど常に頼りになる強い部下だ。
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