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「そうだな。だから強いんだろうな」
「俺、三途さんを見習いたい。面倒見ないって言った相手のことさえ命懸けて助けたんだ。俺も三途さんにもたくさん助けられたよ……蓮とのことでも。三途さんとチーフを見てると、蓮の言う『根っこ』っていうのが分かる気がする」
ジェイを抱き締めた、周りなんかどうでもいい。
「やっぱりお前も強いよ。俺はお前の弱さと強さが好きだ。きっとお前らしい強さが育つ」
「俺らしい?」
「みんな強さが同じってわけじゃない。同じになる必要も無いんだ。お前はお前の強さを持てばいい。そこが根っこになる。きっとお前を育ててくれる」
夜が明ける前に池沢は説明してくれていた男性に会いに行った。
「船窪小屋という所に行くのは可能ですか? 皆さんの邪魔になる気はないんです」
「残念ですが、ここでお待ちいただきたい。山で1時間でも登ると気温は急速に下がります。登山の心得と装備が無ければ不可能なんです。二次災害の危険は冒したくない」
「……そうですね、無理なことを言いました。申し訳ないです」
「もうすぐヘリが飛びます。天気は収まりつつありますよ」
男性は池沢の土下座したあの姿を覚えている。
「精一杯やります。世間はよく言います、山に登らなければいいじゃないかと。でも誰かに分かってもらうために登るんじゃない。私はそう思っています。私も登るのが好きですからね」
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