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9時前に上の救助隊から現場に到着したと連絡が入った。リーダーの栗本たちに転落場所を確認し、捜索に取り掛かると。栗本たちは疲労が激しいため船窪小屋に移すそうだ。
『もう崖下に降り始めていますから。見つかればヘリが出て隊員が降下し救助します』
祈るしかない、無事に帰ってくれと。言葉を交わすことも無く、ただみんな知らせを待ち続けていた。
朗報と言えるのかどうか。2時間近く経ってザックが見つかったと知らせが入った。
「他には!?」
『ザックだけです、本人は見つかりません! もっと下に降ります! 林というほどじゃありませんが木が立ち並んでいるのでどこかに引っかかっているかもしれません!』
その知らせを聞いた時、みんなは複雑な表情を浮かべた。
「ザックだけがあったって……手元に何も無いってことか」
イチがぽつんと言う。
「何本も木が生えてるならどうにかして雨風から避難してるかもしれない」
「カジ、私は余計な希望は持ちたくないんだよ。まだ何も無いのと変わらないじゃないか……」
「千津子、口にするな。捜索している人たちに申し訳ない」
「……はい」
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