513人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
みんなで外に出てみた。空は嘘のように青く澄んでいた。太陽をこんなに有難いと思ったことは無い。
「この空を見てるよ、きっと。ね、チーフ」
「俺もそう思う。きっと迎えを待ってる。池沢、見つかるよ」
「もちろんです、プロポーズ聞いてもらわなきゃなりませんからね」
「いつからだ? 意識したのは」
「遭難と聞いた時……前から感じるものはあったんですがそれが何か分からなかった。あの時はっきりと分かりましたよ。あいつ、いつの間にか大事なものになってました」
「そうか。お前たちならお似合いだよ。最強だ」
「ええ。最強のペアになりますよ」
「みんな逃げるね」
ジェイの言葉に池沢は笑みを浮かべた。
「今日は……見つかるよね……」
「千津子……」
「あんたの前でくらい泣かせてよ……どこで泣いたらいいの?」
「……すまん、弱音を吐くわけには行かねぇんだ、俺も崩れる」
「分かってるよ! でも……あんただって私の前でくらい正直でいてよ……」
「……ああ、見つかるさ。ありさは強い子だ。俺たちの娘だからな。あいつが未熟児で生まれたなんて誰も信じねぇだろうさ……あん時はどうなるかと思ったよなぁ」
「896グラム。まともに育つのかといつも心配だった……」
遠い日の娘の姿が昨日のことのように浮かんできた。毎日が心配の日々だった。
最初のコメントを投稿しよう!