12.ゴールデンウィーク

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  「強く育ってほしくてあれこれさせたな。そのせいかいつの間にか心配も要らねぇくらいになっちまって……」 「そうだね、車や山なんかに夢中になるとは思わなかったねぇ」 「負けず嫌いだった、駆けっこでもなんでも負けると泣いて泣いて……」 「あの頃と今じゃ大違い!」  女将さんの涙にぬれる顔に笑いが漏れた。 「入院した時だったな、8歳だったか。あん時に虐めのせいで入院した子と仲良くなったんだよな」 「退院したら遊ぼうって約束したって。でもありさの退院は決まらなかった。一度見舞いに来てくれたね……」 「ああ。やっとありさが退院して、聞いた電話番号に俺がかけた、遊びに行かせていいかって。そしたら学校で階段から突き飛ばされて死んじまったって聞かされたんだ。あれからありさは変わった」 「許せなかったんだね、弱いもん虐めがさ。そしてとうとう男だか女だか分かんなくなっちまった」 「それでも嫁に欲しいと言ってくれた……千津子、ありさが良けりゃ俺は許すよ」 「跡目を継げって言わないかい?」 「跡目はイチにやる。そう決めたよ」 「……ありがとう」 「ばか、俺たちの娘だ。幸せにしてやりてぇからな」   
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