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「ありさ……」
「母さん……ごめん、父さんも」
喉に挿管していたせいもあってまだ声が掠れている。
「この馬鹿もん! みんなに心配かけやがって」
「ごめんね、みんな……」
「三途、無理に喋らなくていい」
それだけ言って蓮は下がった。池沢が三途川のそばに立つ。
「チーフ、来てたんですか?」
「決まってるだろ……バカ、心配したんだ。無事に帰るって約束したのに」
そう言いながらそっと右手を握る。この手だけは無事だ。
「お前に言うことがある」
見上げる三途川の顔に優しい目が向けられた。ジェイの方がドキドキしていた。
「俺と結婚してくれ。嫌だと言うな」
「……チーフ、それ、プロポーズ?」
「そうだ」
「みんなの前で? Noは無しなの?」
「ああ。辛いだろ? あまり喋るな。お前は頷けばいいんだ」
「無茶を言うわ」
くすりと笑って顔を歪めた。右頬、額に傷がありガーゼが当てられている。
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