12.ゴールデンウィーク

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   みんなが出ていくのを見届けて三途川は池沢の手を握り返した。 「私、簡単な女じゃないです」 「知ってる、面倒臭いヤツだっていうのは」 「年上です」 「それも知ってる」 「オフィスで夫婦ですか?」 「それがどうした、見せつけてやればいいんだ」 「開き直りますね」 「当然だ。課長補佐だ、みんなに文句は言わせない」 「出世しないと。私、贅沢が好きです」 「任せとけ」 「……偉そう……」 「夫だからな。俺は亭主関白だ、多分」 「それはどうかしら」  大きな手がガーゼに覆われていない頬を撫でた。 「返事は? ありさ」 「……するわ。イエスよ。ずっと……池沢さんの声が響いてた。歌まで聞こえてた。声、デカいって文句言ったような気がする。私……」  池沢の手に自分の手を重ねた。 「独りじゃなかったわ、寒かったけど」  
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